イタリア語の発音の解説
イタリア語の特徴は、強勢長音と長子音、そしてrです。
buono
【ブオーノ】
[ bwɔno ]
と言えば、おいしい、の意味のイタリア語です。
日本語では、小野(おの)と大野(おーの)で意味が変わってしまいます。短音と長音で弁別するのが日本語です。
イタリア語では、短音と長音で弁別しません。強勢(アクセント)として利用されます。
イタリア語では、短音が弱勢、長音が強勢です。強く読む強勢では、母音を長く言ってください。
ブオノ、ではなく、ブオーノ、です。イタリア語の強勢長音はこのような感じです。
本サイトのコンバータでは、すべての強勢を長音にしました。
ただし、次の場合のイタリア語単語では、実際には強勢がそこまで長音になるわけではありません。
・二重母音の強勢
・母音+l+子音の際の母音、母音+r+子音の際の母音、母音+s+子音の際の母音
・母音+長子音の際の母音
長子音は同じ子音が2度連続します。次のような長子音があります。
ff 【っふ】 [ ff ] |
tariffa 【タリーっふア】 [ taɾiffa ] |
vv 【っヴ】 [ vv ] |
avviare 【アっヴイアーレ】 [ avviare ] |
bb 【っブ】 [ bb ] |
abbaiare 【アっバイアーレ】 [ abbajare ] |
pp 【っプ】 [ pp ] |
apparire 【アっパリーレ】 [ appaɾire ] |
dd 【っド】 [ dd ] |
addio 【アっデイーオ】 [ addio ] |
tt 【っト】 [ tt ] |
gatto 【ガーっト】 [ ɡatto ] |
kk 【っク】 [ kk ] |
piccolo 【ピーっコろオ】 [ pikkolo ] |
sc 【っシ】 [ ʃʃ ] |
uscita 【ウっシータ】 [ uʃʃita ] |
cc 【っチ】 [ tʧ ] |
acceso 【アっチエーソ】 [ atʧɛso ] |
gg 【っヂ】 [ dʤ ] |
legge 【れエーっヂエ】 [ lɛdʤe ] |
ss 【っス】 [ ss ] |
lusso 【るウーっソ】 [ lusso ] |
zz 【っツ】 [ tʦ ] |
mazzo 【マーっツオ】 [ matʦo ] |
nn 【ンヌ】 [ nn ] |
nonno 【ノーンノ】 [ nɔnno ] |
mm 【ンム】 [ mm ] |
dramma 【ドルラーンマ】 [ dramma ] |
gn 【ンニ】 [ ɲɲ ] |
legno 【れエーンニヨ】 [ lɛɲɲo ] |
ll 【うる】 [ ll ] |
livello 【りイヴエーうろオ】 [ livɛllo ] |
gl 【うり】 [ ʎʎ ] |
figlio 【ふイーうりヨ】 [ fiʎʎo ] |
長子音である場合、先の子音は基本的に促音便【っ】と表記します。
日本語でのソックスをローマ字で表記すると [ sokkusu ] とkkが2回連続することでおなじみです。
長子音のうち後の子音は通常通りです。
鼻音 [ n ][ m ][ ɲ ] の長子音の先の子音は撥音便【ン】と表記します。
ハンマーは英語でhammer。
nnのようにnが2回連続する場合だけでなく、mmのようにmが2回連続する場合も【ン】の音になるわけです。
[ ɲ ]はニャニニュ二ェニョの時の子音です。
l系統の子音すなわち [ l ]と[ ʎ ] が長子音になると先の子音は【う】となります。
英語で言うところの閉じたL。英語のallをオーぅと言うのと同じです。
そしてイタリア語のr。
舌の先を震わせる震え音として世界的に有名です。
ただし、rの音そのものは日本語のラ行と同じなのです。
英語のrのように歯茎に触れないわけでもなく
フランス語のrのように口の奥の軟口蓋で出すわけでもないのです。
日本語のrと同じように、歯茎を短く叩き弾く音がイタリア語のrです。
そしてそのイタリア語のrは、
1度だけ叩き弾く日本語のラ行と同じ場合の時と
2度震え叩き弾く、いわば江戸っ子のべらんめえ口調になる場合の時があります。
rが日本語と同様の弾音[ɾ](記号をよく見ると縦棒がない)になるのは
⓪ r が母音で挟まれている場合
例:amore, allora
それ以外のrはすべてイタリア語らしい震音[r](記号をよく見るとおなじみの縦棒がある)になります。
① rr と表記されている場合(IPA発音記号はあえて[ɾɾ]とする)
例:terra, burro
② r の直前か直後に子音がある(IPA発音記号は[r]とする)
例:grazie, parte
③ r が単語の最初(IPA発音記号は[r]とする)
例:rosso, ricetta
④ r が単語の最後(IPA発音記号は[r]とする)
例:per, bar
※ただし単語内に強勢がありrが弱勢に含まれる場合は弾音[ɾ]
例:computer, hamburger
本サイトにおいて、[ɾɾ]と[r]は同じ音としています。
実際の発音もルを二度繰り返す音ですが
terrrroreのように強調したい場合は無限に繰り返すことができます。
[ j ] と [ w ] はイタリア語では子音でなく母音として扱います。
異なる母音が連なる二重母音の際、前の母音が単語のスペルで i か u の時にそれぞれ [ j ] と [ w ] と発音します。
[ j ] は[ i ]の弱母音、[ w ] は[ u ]の弱母音、という位置づけです。
binario
【ビナーリオ】
[ binaɾjo ]
binarioという単語の後半部arioの発音は[ aɾjo ]となります。
もし [ j ] が子音なら[ arjo ]となり、rは震え音になるはずですが、実際には[ aɾjo ]でありrは震え音になりません。
そのことからも [ j ] が母音として振る舞っていることがわかります。
そういうこともあり、イタリア語での [ ja ][ ju ][ jo ] は【ヤ】【ユ】【ヨ】ではなく【ィア】【ィウ】【ィオ】と表記しています。
なぜそうなるのか。
それは単語でのスペル表記がia、iu、ioなのだからです。
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イタリアと言えばアニメ『ARIA』ですね。
天野こずえ先生の漫画作品が原作。
世界的に有名な作品です。
ヴェネツィアを舞台にした乙女たちのゴンドラ漕ぎの物語。
以下はアニメーションの続編につけられた副題。
そよ風
arietta
【アリエーっタ】
[ arjɛtta ]
神の加護
benedizione
【ベネデイっツイオーネ】
[ beneditʦjɔne ]
たそがれ時
crepuscolo
【クルレプースコろオ】
[ krepuskolo ]
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なお、
本サイトでは
[ ɛ ] も [ e ] も【エ】
[ ɛ ] も [ o ] も【オ】
としています。
歴史的に振り返れば
[ ɛ ] は è の音
[ e ] は é の音
[ ɔ ] は ò の音
[ o ] は ó の音
をそれぞれ表していましたが、
[ ɛ ] と [ ɔ ] は強勢
[ e ] と [ o ] は弱勢
を表すだけとなり、現在では口の開きは同じになってしまったので、
[ ɛ ] も [ e ] も【エ】
[ ɛ ] も [ o ] も【オ】
とするのがイタリア語の現状に即していることになるのです。
あとは英語の発音記号を理解していれば
イタリア語は難しくありません。
イタリア語には、英語のthもありませんし。
下の発音リストを確認しながら、コンバーターで出力されたイタリア語の呵名発音記号を読んでみてください。
《イタリア語のIPA発音記号&小大式呵名発音記号の用語一覧》
母音 | |
[ i ]【イ】 | 舌の先を最も上げる母音 前舌狭段音(平唇) |
[ j ]【イ】 | 舌の先を最も上げる母音[i]が半子音的にふるまう 前舌狭段音(平唇) |
[ ɛ ]【エ】 | 舌の先を中ほどまで下げる母音 前舌中段音(平唇) |
[ e ]【エ】 | 舌の先を中ほどまで下げる母音(歴史的には[ɛ]よりもあごを閉じる音だが現在のイタリア語では[ɛ]と[e]は同化) 前舌中段音(平唇) |
[ a ]【ア】 | 舌全体を下げてあごを開く母音 中舌広段音(平唇) |
[ ɔ ]【オ】 | 舌の奥を中ほどまで下げる母音 後舌中段音(円唇) |
[ o ]【オ】 | 舌の奥を中ほどまで下げる母音(歴史的には[ɔ]よりもあごを閉じる音だが現在のイタリア語では[ɔ]と[o]は同化) 後舌中段音(円唇) |
[ u ]【ウ】 | 舌の奥を最も上げる母音 後舌狭段音(円唇) |
[ w ]【ウ】 | 舌の奥を最も上げる母音[u]が半子音的にふるまう 後舌狭段音(円唇) |
子音 | |
[ p ]【プ】 | 上下の唇で破裂させる澄んだ音 破裂音(両唇)無声音 |
[ b ]【ブ】 | 上下の唇で破裂させる濁った音 破裂音(両唇)有声音 |
[ t ]【ト】 | 舌と歯茎で破裂させる澄んだ音 破裂音(歯茎)無声音 |
[ d ]【ド】 | 舌と歯茎で破裂させる濁った音 破裂音(歯茎)有声音 |
[ k ]【ク】 | 口蓋の奥で破裂させる澄んだ音 破裂音(軟口蓋)無声音 |
[ g ]【グ】 | 口蓋の奥で破裂させる濁った音 破裂音(軟口蓋)有声音 |
[ ʦ ]【ツ】 | 舌と歯茎で破擦させる澄んだ音 破擦音(歯茎)無声音 |
[ ʣ ]【ヅ】 | 舌と歯茎で破擦させる濁った音 破擦音(歯茎)有声音 |
[ ʧ ]【チ】 | 歯茎の上で破擦させる澄んだ音 破擦音(硬口蓋)無声音 |
[ ʤ ]【ヂ】 | 歯茎の上で破擦させる濁った音 破擦音(硬口蓋)有声音 |
[ f ]【ふ】 | 歯と下唇で摩擦させる澄んだ音 摩擦音(唇歯)無声音 |
[ v ]【ヴ】 | 歯と下唇で摩擦させる濁った音 摩擦音(唇歯)有声音 |
[ s ]【ス】 | 舌と歯茎で摩擦させる澄んだ音 摩擦音(歯茎)無声音 |
[ z ]【ズ】 | 舌と歯茎で摩擦させる濁った音 摩擦音(歯茎)有声音 |
[ ʃ ]【シ】 | 歯茎の上で摩擦させる澄んだ音 摩擦音(歯茎奥)無声音 |
[ m ]【ム】【ン】 | 上下の唇から鼻に抜く濁った音 鼻音(両唇)有声音 |
[ n ]【ヌ】【ン】 | 舌と歯茎から鼻に抜く濁った音 鼻音(歯茎)有声音 |
[ ɲ ]【ニ】【ン】 | 舌と硬口蓋から鼻に抜く濁った音 鼻音(硬口蓋)有声音 |
[ l ]【る】【う】 | 舌を歯茎に密着させる濁った音 側流音(歯茎)有声音 |
[ ʎ ]【り】【う】 | 舌を硬口蓋に密着させる濁った音 側流音(歯茎)有声音 |
[ ɾ ]【ル】 | 舌を歯茎に叩き弾く濁った音(日本語のラ行と同じ) 叩弾音(歯茎)有声音 |
[ r ]【ルル】 | 舌を歯茎に叩き弾く濁った音(日本語のラ行と同じ)を2回連続で 震叩音(歯茎)有声音 |